【医療事故】カルテの開示を受けるのは患者の権利です

筆者:吉田哲也

Q. 私は、背中の手術の直後から下半身が麻痺し、動かなくなってしまいました。病院は、手術は成功したが、下半身麻痺になった原因は不明といいます。何度か主治医に説明を求めましたが、主治医はきちんと説明してくれません。

下半身麻痺が病院側の何らかのミスで発生したのであれば、適切な保証を求めたいと思っています。

どのようにしたらよいでしょうか?


A. 手術の直後から麻痺が生じ始めたということであれば、手術中にその原因となる何らかの事故があったと考えるのが自然ですね。どのような診察、検査がされ、どのような見立てがなされ、どのような治療を行ったのか等々の医療情報は、全てカルテと呼ばれる診療記録にまとめられています。

医療機関において何が起こって、そこに何らかのミスがあるのかどうかを検討するには、まず、このカルテを調査しなければなりません。カルテは受け取りましたか?


Q. お医者様に対して、患者である私がカルテを要求するというのはどうにも気が引けます。


A. カルテはあなたの診療に関する情報が記載されているものであり、あなたの「自己情報」です。自分の情報を見るのに遠慮はいりません。法律上も、患者にはカルテの開示請求権があるとされています。気軽にカルテの開示を要求してよいのですよ。


Q. カルテの開示を求めたら、改ざんされてしまうのではないでしょうか?


A. カルテの改ざんは、そもそも違法なのですが、絶対にないとは言い切れません。もし、改ざんの危険が気になるのであれば、「証拠保全」といって裁判所の手続で、抜き打ちでカルテを保全してしまう(具体的には、コピーをとる)ことも可能です。


Q. もし、カルテが入手できても、私も弁護士さんも医療の素人ですよね。医療の専門的な事柄をどのようにして解明していったらよいのでしょうか?


A. カルテの読み方や、医療ミスがあるのかないのかなどを検討するためには、どうしても協力医の助言が必要です。協力医については、弁護士が協力医のネットワークを通じて確保するのが普通です。相談してみてください。

そして、協力医の助言を得て、弁護士の法律的な検討を経たうえで医療側の責任を問えるということになれば、示談交渉、調停、裁判といった手続に移ることになります。


Q. 医療事故専門でやっている弁護士さんに依頼したいのですが?


A. 医療事故を専門で扱っている弁護士は、いることはいますが全国的に見ても数はたいへん少ないです。

医療事故専門というわけではありませんが、医療事故を患者側で集団的に取り組んでいる弁護士の集団はあります。

熊本では、「九州・山口医療問題研究会熊本弁護団」(電話096-366-3318)があります。
また、補償までは求める気はない、事故の内容についての説明をきちんとしてほしい、とにかく苦情を聞いてほしいという場合には、「患者の権利オンブズマン」
(福岡:092-643-7579:http://www.patient-rights.or.jp/
に相談されるとよいかもしれません。

この団体では、患者の権利を実現するという立場で、面談相談や同行支援などの支援を行っていますので、お電話されてみてはいかがでしょう。