筆者:吉田哲也
Q. 三か月前、ある業者からダイレクトメールが届き、「超低利、即決融資100万円」と書いてありました。失業中で生活費に困っていた私は、その言葉に飛びつき、電話をしました。すると、業者の担当者は、「最初は、小口の貸付け、返済をしてもらって信用を高めてもらう必要がある」とのことで、まず「2万円」を貸すということでした。しかし、2万円は入金されず、最初は1万7000円しか入金されませんでした。約束では1週間後に3万円を払って完済扱いになるということでした。完済しない場合には、1万3000円を払うという約束でした。最初のうちは、1週間ごとに1万3000円を何とか支払えていたのですが、そのうち支払えなくなり、脅しの電話がかかってくるようになりました。今では、夫の職場にまで電話してきています。何とか助けてほしいのですが?
A. 典型的なヤミ金業者です。1万7000円の元本が1週間で3万円になるとすれば、その金利は、年利4000%を超えます。昔「トイチ」(10日で1割の金利のこと)という言葉がはやりましたが、「トイチ」でも年利400%にもならないことを考えると、この金利の異常ぶりがよく分かります。適法な利息の上限は、年利20%です(利息制限法)。また、年利29.2%を超える利息をとることは、出資法違反のれっきとした犯罪です。出資法違反の刑罰は、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金とかなり重いものになっています。
また、ヤミ金からの借入れについては、法的に返済義務がありません。ヤミ金との契約など、公序良俗に反して無効なのです。無効な契約に従う必要はありません。ヤミ金からの借入れを返さないといけないとすれば、「ヤミ金のやり得」になってしまいます。その意味で、返済義務がないのは当然のことです。
Q. 取立てをやめさせるにはどうしたらよいでしょうか。
A. ヤミ金の取立ては、出資法違反であり、恐喝罪であり、脅迫罪であり、犯罪のオンパレードです。こうした犯罪を取り締まる仕事をしているのが警察です。ですから、まず、警察に「告訴」すべきです。「告訴」すれば、必ず捜査してくれます。
また、ヤミ金に対しては、郵便、ファックス、電話といった手段で、ヤミ金に対しては支払う義務がないこと、出資法違反などで告訴すること、一切の取立てをやめることを通知します。そうすると、ほとんどのヤミ金の取立てはやみます。ごく一部、しつこい業者もありますが、最後にはあきらめます。
さらに、ヤミ金の武器(携帯電話、口座)を取り上げることが肝要です。携帯電話会社や金融機関、金融庁などに申告することによって、それらの武器を無効化することが可能です。
Q. 夫は、しつこい業者には支払った方がいいのではないかと言っていますが?
A. それは絶対にいけません。ヤミ金は、あなただけを相手にしているわけではありません。大勢のあなたと同じ立場の人に対して取立てをして、大もうけしているのです。ですから、あなたの周りを攻めても無駄ということが分かれば、あきらめて次のターゲットを攻撃するのです。もし、あなたやご主人がそのしつこさにまけて支払ってしまったら、ヤミ金からすれば「この家は脅かせば金を払ってくれる」と思って、あなたに対する攻撃を強めるだけです。
ですから、夫が肩代わりする、親戚が山を売って払うなどということはもってのほかで、もったいないだけです。ヤミ金には絶対支払わないということが最大の対策なのです。
Q. ヤミ金の仕返しが怖いのですが?
A. ヤミ金は決して表に出て堂々とすることができない人々です。正体は決して明かさない。顔も見せない。それがヤミ金の常道です。ですから、裁判を仕掛けてくることなどありえません。もし仕掛けてくるなら、堂々と受けて立てばよいことです。そして、ヤミ金にできる嫌がらせは、ピザやカツ丼を送りつけてきたり、消防車を呼ぶなどセコイものばかりです。
ヤミ金対策については、弁護士に依頼することも重要です。
そして、腹を据えて、「ヤミ金には絶対に支払わない」、「嫌がらせなどに対しては、それに屈せずに、徹底的に反撃する」、この単純なことができれば、ヤミ金は撃退できるのです。